さて、今月はどのようなお話でしょうか
MC: 担当D:サッキ
配信日:毎月1回
- 相生古こぼれ話 第103回 「よもぎ餅」 2023年2月20日
相生古こぼれ話 第103回 「よもぎ餅」
地名の謂われや建造物、人物などの相生市内の歴史をお伝えする番組です。
さて、今月はどのようなお話でしょうか暖かくなると「よもぎ」が地面から芽を出し、春を感じます。しかし「よもぎ」は美味しいおやつになったり、お小遣いになったり。今よりずっと生活に寄り添っていたのですね。こどもの視線からの「よもぎ」です。お聞きください。
~Sakki談~
sakkiはよもぎを摘んでよもぎ餅をつくった事があります。すごく香りが豊かで、市販の物とは比べ物にならないくらい美味しいものでした。今はスーパーに行けば1年中よもぎ餅が手に入る時代です。よもぎ餅が大好きなsakkiにとってはそれはそれでうれしい事ですが、1年中食べられなくても、あの香り豊かなよもぎ餅を普通に食べられる時代。ちょっとうらやましい気がします。
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相生いにしえこぼれ話 第103回 「よもぎ餅」
春の日差しが柔らかくこの町を包むようになると、町の菓子屋の店先には、ガラス張りの菓子箱の中によもぎ餅が並べられるようになる。それは季節を感じさせる色であり、味覚でもあった。
しかし、1個が5銭もするとあっては、子供たちの手に合うものではなかった。蓬の緑色のさわやかさと中のあんこの甘さを想像して、「うまそうだ」とチラリと目をやりつつ、唾を飲み込んで通り過ぎるというものであった。
大正の頃、南町(みなみじょ)の火の見櫓の横に、「チカンサン」と呼ばれる子供たちの店があった。そこでは1銭でよもぎ餅が売られていたのだが、子供たちの興味をそそるものが他にもたくさんあったので、よもぎ餅に大事な小遣いを使うことはなかった。しかし、よもぎ餅に縁がなかったかと言えばそうではない。
当時、3月3日の雛の節句には、たいていの家ではよもぎ餅を作って節句を祝ったものだった。店頭のものと比べると大変見てくれが悪かったが、季節の味は十分であった。
三方を山に囲まれているこの町では、ちょっと歩くとそこはもう山裾で、一歩山道に入ってみると、道端には、タンポポやすみれの花に交じって萌黄色(もえぎいろ)もさわやかな蓬がたくさん生えていた。
子供たちの中には、遊びの片手間にそれを摘んで、丹念にゴミを取り除き、町の菓子屋に持ち込み、いくらかで買い取ってもらっていた者もいた。
馬場坂(うまばざか)のかかり辺りから、「お谷」と呼ばれる滝までの小径(こみち)には
良質な蓬が密生していたし、観音さんの裏道を登っていくと、忠魂碑までの細い山道にも、その辺一帯の畑の畔にも、蓬はいっぱい生えていたものだった。
季節感が自然と人間の触れ合う接点だとすれば、子供の頃に何ということもなく食べていたよもぎ餅にも季節があったのだと今更ながら感じられる。ぜひ、早春のこの季節を感じながら味わってほしいものである。
今回は江見錬太郎著「ふるさと想い出の記」より引用しました。
(相生らじお「古こぼれ話」は見えるらじおを目指しています)
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