相生古こぼれ話

相生古こぼれ話 地名の謂われや建造物、人物などの相生市内の歴史をお伝えする番組です
さて、今月はどのようなお話でしょうか

MC:    担当D:サッキ
配信日:毎月1回
  • 相生古こぼれ話 第111回「相生の婚礼その2」 2024年3月13日

    相生古こぼれ話
    地名の謂われや建造物、人物などの相生市内の歴史をお伝えする番組です。
    さて、今月はどのようなお話でしょうか

    ではお聞きください

     

    相生いにしえこぼれ話 第111回 「相生の婚礼 その二」

    「わぁーい、嫁入りだぞぉ!」と言う声に「それっ!」とばかりに駆け出した幼い日の記憶がある。実際は嫁入り道具搬入の行列だったので、花嫁さんが見られるものではなかった。

    その時は、確か、馬場(うまば)から坂越えに来た行列が、大谷川沿いの道路端で一服しているところだった。大勢の人が取り囲んでいた中に潜り込んで覗いてみたのである。

    一行の人が宰領さんと呼んでいた人は、羽織袴に威儀を正して、この儀式を取り仕切っていたようだった。そして、一行の装いは、紅白のねじり鉢巻きを粋に締め、揃いの半纏(はんてん)に草履履きといった風だった。

    紅白の布を巻き付けた青竹の担ぎ台に嫁入り荷物は載せられ、紺地に家紋を白く染め抜いた大布や定紋つきの油紙、唐草模様の大風呂敷が掛けられていて中は見えない。大人たちの話を耳にすると、荷物は既に婚家に持ち込まれていて、この行列は儀式としてのものらしかった。

    やがて、婚家から振る舞い酒を持った荷迎えの者がやってきて、ご苦労をねぎらうのか、景気づけのためか、一行の者にコップで酒を振舞った。

    宰領が機を見て合図すると、荷台の支えにしていた杖が取り外され、一同は「ヨイショ」と掛け声を合わせて肩を入れる。そして行列は動き出す。子供たちは、ワイワイガヤガヤとそのあとに続いたものだった。

    婚家が近づいてくると、荷を担ぐ人々は殊更(ことさら)の様に千鳥足になる。そうすることも儀式であったのかもしれない。すると、先頭の方から「嫁入り唄」が流れてくる。

    今日は日もよし 天気も良いし

    結び合わせて 縁となるぞぇ

    アァ ヤレヤレー

    蝶よ花よと 育てた娘

    今日は晴れての お嫁入りぞぇ

    アァ ヤレヤレー

    「嫁入り唄」に景気づけられて、やがて一行は婚家に迎え入れられることになるが、そこで改めて祝儀酒の振る舞いを受けることになる。

    花嫁が身内の人々に付き添われて、嫁入り先の門をくぐることになるのは、夜のとばりがすっかり降りてからのことで、私たち子供には、その前触れのこの儀式が婚礼そのものに思えたのであった。

     

    今回は江見錬太郎著「ふるさと想い出の記」より引用しました。

    相生いにしえこぼれ話、furukawa がお届けいたしました。

    続きを読む →

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする