第63回では「松崎清泉」のいわれについてお話しましたが、今回は松崎清泉の守護神である龍神の化身のうわばみと孝行息子のお話をお届けします。
【引用:棚橋順子著「ふるさと相生つれづれ草】
【松崎の地蔵】
~sakki談~
大正2年清泉の傍に龍を恐れる人々が地蔵尊「松崎の地蔵」を建立しました。
この地蔵尊は84000体の地蔵尊のひとつ、相生市内にはここを含めて5体あります。
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古こぼれ話はみえるらじおを目指します
相生古こぼれ話第64回「花川の水」
気帆船「福丸」の船長は甥の周三を誘って船に乗りました。周三の父は遠い千葉に仕事で行き、母は病弱で周三が看病をしていました。そんな甥を元気つけるために誘ったのです。周三はそんな叔父の誘いに喜んでついていきました。
おおの港から割り木を積んで船出し、野瀬でスイカやマクワウリを積み終わったが、うっかり水をくむのを忘れたので、船長は周三に松崎清泉まで水を汲んでくるように言いつけました。
その時はすっかり暗くなっていたので、こわごわと150メートル程の道を桶をもって走っていきました。ふと前をみた周三はびくっとしました。なにか大きな黒いものが動いたような気がしたのです。急いで水を汲んで一目散に今来た道を駆け出しましたが、怖くて思うように走れません。ようやく船についたときは桶の水は半分になっていました。「もう一度いってこい」と言われ、半べそをかきながらもう一度行きました。
水を汲み終えひょっと前を見るとらんらんと輝く二つの目を光らせ、大きな口をした龍がじっと見ていました。しばらくして「周三よ。よく頑張ってきたな。この湧き水は花川の井(はなかわのい)というて霊験あらたかな水であるぞ。おまえの勇気といつも母をいたわる孝行な心に対し褒美を与えよう。この水を母に飲ましてやるがよい。」というとものすごい光と音をたて裏山から天へ昇って行きました。周三は急いで船に帰り母のために竹筒に少し水をとっておきました。
小豆島で醤油やみそを積み、小さな島に立ち寄り船はおおの港に帰ってきました。周三は龍神にもらった水を早速母に飲ませると不思議にも母の病気はなおりました。母はとても喜びました。
相生湾に出入りする船はみなこの泉の水を利用していましたが、泉源がかれてしまい今は伝説だけになりました。